コンサートシーズン真っただ中

秋のコンサートシーズンが始まり、毎週のように様々なコンサートでピアノを弾かせて頂いています。
先週のサントリー小ホールでのボーカルコンサートに引き続き、昨日はモーツァルトが作曲した「コジ・ファン・トゥッテ」のハイライト版コンサートでした。

 

サントリーホールで演奏したシャブリエの曲は日本ではほとんど演奏されていない珍しい曲でフランス語の美しい音に茶目っ毛たっぷりの音楽がとても楽しく、お客様にも好評でした。また、ルルーが作曲した「ナイル川」という曲は雄大な河の流れを表すかのような曲で、ピアノの細かく流麗な音に滔々と流れるメロディーが歌われていく曲でした。サントリーホールの豊かな響きの中で歌とピアノの音が交ざり合っていく。。。という体験をし、ホールで演奏する醍醐味を味わうことができました。

そして、昨日の「コジ・ファン・トゥッテ」。学生の頃、一番苦手だったのがモーツァルトでした。聴いているととても美しく素敵な曲なのに、自分が演奏するとちっとも素敵にならない。。。それが嫌で仕方なかったのですが、ある時ふとモーツァルトを弾いてみたいという気分に駆られ、それ以来、あれこれと試行錯誤しながらモーツァルトの求めた響きを探っています。

「コジ・ファン・トゥッテ」はモーツァルトがきっと大好きだったであろう男女の恋愛についての喜劇で、曲の至るところにモーツァルトのいたずらが潜んでいます。それが見えてきてからの曲作りはとても楽しく、今回始めて手がけた作品でしたが、たくさんの収穫がありました。

 

本番当日、改めてモーツァルトの譜面をじっくり眺めていた時、ふと、大学時代の音楽学の講義を思い出しました。その日の講義は楽譜の成り立ちについて。先生が興奮気味にいかにして今の楽譜が出来上がったのかをお話されていたのですが、その時の私にはその先生の興奮が全く理解できていなかったのです。でも、昨日、モーツァルトの楽譜と対峙しながら、もし、楽譜がなかったら。。。何百年も前に生きていた一人の天才モーツァルトが頭に思い描いた素晴らしい音楽を現代の私たちが知り得ることはなかったのだ。。。と思い至り、あの時の先生の興奮をやっと理解することができました。

そいう思いで楽譜を見ると、あちこちからモーツァルトの声が聞こえ、心が見えるのです。「ああ、このモーツァルトの気持ちをお客さんに伝えたいなぁ」と思い臨んだ本番でした。

全て完璧にはいかなかったけれど、、、演奏しながら楽譜の中のモーツァルトに出会える瞬間があったことはとても貴重な体験です。
これから、楽譜の見方が更に変わりそうです。

まだまだ本番は続きますが、一つ一つの音、一回一回の本番を大切に真摯に音楽と向き合いたいと思います。

 

上記二つの公演にご来場下さいました皆様、本当にありがとうございました。
そして、この二つの公演に出演する機会を下さった方、共演者にも感謝いたします。