リサイタルを終えて

邦人作品 解説中
邦人作品 解説中

4月25日、すみだトリフォニー小ホールにおいて7回目、そして初めてのリサイタルから10年目にあたる節目のリサイタルを無事に終えました。
お忙しい中ご来場くださった皆様ありがとうございました。
そして、当日会場の受付、裏方を支えて下さった皆様、ホールのスタッフの皆様も本当にありがとうございました。心強いサポートのおかげで演奏当日はとにかく演奏することのみに私は集中することができます。ありがたいことです。

 今回のリサイタルのテーマは作曲家が見ていたであろう風景を楽譜から読み取り、その色彩感、空気感を音で表現することでした。
プログラムも映像が思い浮かぶような曲として、ベルギーの作曲家ペーテル・ブノワの「物語と伝説」、ベートーヴェンのソナタ「月光」、ドビュッシーの前奏曲集より5曲、そして尾崎敏之氏による「ピアノの為の幻想的断片」を演奏致しました。

 特に、後半に演奏した尾崎氏の作品は5年前に亡くなられた私の恩師の為に書かれた作品ということもあり、自分の思い入れも強く、その後続けて演奏したドビュッシーと併せて、自分がそこに存在しつつも作品の中に入り込んでいるかのような不思議な感覚の集中力の中で演奏することができました。

 10年前には見えなかった楽譜の向こうの世界がほんの少し見え始め、作曲家がどのような音をどのような響きを求めていたのかをより深く追及していきたいと思うようになってきました。まだ、そのすべてを本番の舞台で表現しきるところまではいきませんでしたが、自分がこれから先進んでいくべき方向、自分がやりたい音楽、自分の欲しい音というものがさらに明確になった様に思います。

もちろん、反省点も多々あり、未熟な部分も多くありますので、その部分をしっかり補強しつつ、でも自分が信じる道にまた新たな気持ちで進んで行きたいと思っております。

 

 リサイタルから3日経過した今日、亡くなられた恩師のレッスンを受けている夢を見ました。でも、それは夢というにはあまりにリアルで目覚めてもまだそこに先生が弾いていたピアノの音の余韻、いつものレッスンと同じように隣で歌ってくださっていた先生の息遣いがありありと残っていました。
亡くなられてもまだ先生に心配をかけているんだなぁという情けなさと共にそれでもずっとずっと会いたいと思っていた先生に会えた喜びが入りまじり、しばらく涙が止まりませんでした。

 

 生前、先生はとても厳しいことも言ってくださいましたが、本番直前、そして本番が終わった後には決して否定的なことはおっしゃいませんでした。ここまで頑張ったんだからあとは舞台でどーんと構えて演奏してきなさい。と送り出してくださり、演奏が終わった後には、言わなくても自分ですべてわかっているだろう、とばかりにじっと目を見てうんうん、とうなずくだけでした。
今日の夢の中の先生は絶えず笑顔で、私が悩んでいた個所について細かく細かく教えてくださいました。そして、さあ、頑張れと背中を押されたような気持ちで目が覚めました。

 

 これまでもそしてこれからも温かく見守って下さる皆さんに最大の感謝をしつつ、これからも焦らず、でも地道にコツコツと研鑽に励んでまいりたいと思います。